技能実習生の受け入れから帰国後のフォローアップまで

暗躍する「ベトナム人窃盗団」…逃亡した技能実習生による犯罪の裏側

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3/13(土) 8:01配信

写真:現代ビジネス

———- 2016年、日本にやってくる外国人技能実習生の国籍別人数で、ベトナムが中国を抜いて1位になった。しかし低賃金でこき使われる彼らの中には、実習先の企業から逃げ出して不法滞在者となった者も多い。その一部は「ボドイ」(ベトナム語で「兵士」という意味)を自称し、各地でベトナム人コミュニティを形成している。 日本で暮らす外国人労働者に迫ったルポ『「低度」外国人材』から、元技能実習生やドロップアウトした留学生たちが犯罪に手を染めるまでを紹介する。 ———- 【写真】コロナ禍のウラで外国人労働者を「見殺し」にする日本社会の闇

在日外国人問題の主役はベトナム人に

 このあたりでそろそろ、ボドイの世界が生まれた背景を整理しておこう。  近年、在日ベトナム人に関係する社会問題は、大きくふたつに分けられる。  ひとつは、彼らの多くが従事している労働環境の過酷さや構造的な中間搾取、低賃金、それらを苦にした逃亡などだ。これらは主に、技能実習制度や留学制度をはじめとした日本の外国人労働制度の欠陥や、日本社会の企業組織や労働現場のありかたに主たる原因がある。  いっぽう、もうひとつの問題は、不良化した留学生や逃亡した技能実習生らによる犯罪の増加だ。これらの「犯罪」には、偽造身分証や車両の入手、さらには自己消費目的での家畜の泥棒といった、生きるうえでやむを得ず選択したと言えなくもない行為もあるが、なかには最初から盗品の転売を目的とした組織的な窃盗や、借金の督促のための同胞へのリンチなど、明白な違法行為を自身の積極的な意志によっておこなっている例もある。  私はもともと中国分野を専門にするライターだが、2017年の末ごろから、こうした在日ベトナム人たちの現状を追いかけるようになった。一昔前まで在日中国人によって担われていたポジションが、ベトナム人に入れ替わりつつある現象に興味を覚えたからだ。  事実、近年のベトナム人は技能実習生数で中国人を抜いて1位になったほか、留学生数や外国人労働者の総数、来日外国人(永住者などを除く外国人)の犯罪摘発人数といった各数字でも中国人に迫る存在感を示している。  右肩上がりで続いた中国の経済発展によって、いまや中国人が日本の非熟練労働現場で働くことの金銭的なメリットは薄れた。ゆえに技能実習生になる中国人は激減している。  また、中国人は在日留学生数こそ増え続けているが、往年のように出稼ぎ目的で来日する留学生は大きく減った。夫が日本人で妻が中国人という国際結婚カップルの数も減少しているので、おそらく中国人女性が資産や在留資格を目的に日本人男性と結婚するケースも減っている。  外国人犯罪についても、来日中国人の刑法犯検挙件数は2006年に約1万件に及んでいたが、2018年には1795件と、12年間で約五分の一まで激減している(ちなみに同じ期間、来日ベトナム人の刑法犯検挙件数は1517件から約2倍の2993件に増えた)。  背景にはやはり、日中間の経済格差の縮小によって犯罪が割に合わなくなったという事情がある。近年は在日中国人マフィアが「日本で悪いことをするよりも儲かる」と、中国に帰ってカタギのビジネスをおこなう例も増えている。  いっぽう、替わって存在感を強めているのがベトナム人だ。技能実習生の逃亡、大量の偽装留学生、不法就労と不法滞在、増加する外国人犯罪……と、一昔前までは在日中国人問題の代名詞だったもろもろの問題は、いまやベトナム人が主役なのである。

犯罪に手を染める「ボドイ」たち

 「日本で罪を犯すベトナム人の割合は、高額の学費を払うのが嫌でドロップアウトした留学生と、逃亡した技能実習生が五分五分ですね」  2018年1月、広島で取材した在日ベトナム人で、警察通訳人を務めているジエム(仮名)からそんな話を聞いたことがある。留学生も技能実習生も、出国前にブローカーなどに支払う費用を捻出するための多額の借金を抱えている例が多く、来日後は利子に苦しみながら返済に追われる。  加えて留学生の場合は高額な学費負担ものしかかる。しかし、彼らが就労する非熟練労働の多くは低賃金だ。日本に来てから賃金の安さと生活費の高さを知り、手元にお金が残らないことに驚く人も少なくない。  「だから、彼らはSNS上の『ボドイ』コミュニティなどで仲間を集めて数人の万引きチームを作る。北部のタイビン省やラオカイ省などの出身者が、同郷同士で組む例も多い」  中国人犯罪者の場合、カードや公文書の偽造、詐欺、売春、窃盗などのさまざまな犯罪をおこなう傾向があるが、ベトナム人の「ボドイ」たちの犯罪は窃盗が圧倒的に多い。警察庁が発表している『平成30年における組織犯罪の情勢』から、一部を引用しておこう。  ベトナム人による犯罪は、窃盗犯が多数を占める状況が一貫して続いており、手口別では万引きの割合が高い。万引きの犯行形態としては、SNS等を介して自国にいる指示役からの指示を受け、数人のグループで、見張り役、実行役、商品搬出役等を分担して、大型ドラッグストア、大型スーパー等に車両で乗り付け、主にベトナムで人気の高い日本製の化粧品等を対象に一度に大量の商品を万引きし、これを広域的、連続的に敢行するなど組織性、計画性が認められ、盗んだ商品を航空機を利用して海外へ運搬していることがうかがわれる。  ジエムによると、貴金属や電化製品は店舗側のセキュリティが厳しいので、化粧品や健康サプリのほうが窃盗の対象になりやすいらしい。  「盗んだ後はフェイスブックを使って、在日ベトナム人の盗品買い取り屋や運び屋に連絡する。最終的に、たとえば化粧品なら日本国内で1万円のモノが、ベトナム国内の市場では3000円くらいで売られることになる。盗品の仕入れ値はタダだから、買い取り代や荷運び代を上乗せしても、原価よりも安い価格で市場に流れてしまうんだ」  確かに、私が後日、ベトナム国内に取材に行った際(『「低度」外国人材』第3章参照)も、街角で日本の正規品の健康食品や乳児用品などを販売する商店を何軒も見かけた。  首都のハノイだけではなく、中越国境の地方都市であるモンカイでも、カルビーのシリアル食品やムーニーのおむつを大量に取り扱っている小商店を見つけて驚いたのだが、あれはもともと偽装留学生や逃亡した技能実習生たちが「仕入れ」をおこなった品物の行き着く先だったのだ。  すこし前の話だが、2014年3月にはベトナム航空の当時25歳のCA(キヤビンアテンダント)が、この手の盗品の運び屋容疑で警視庁に逮捕され、さらに副機長1人とCA 5人の計6人がベトナム航空社内で停職処分を受けている。  報道を調べると、同様の事件はそれ以前にも何度か起きている。ベトナムのナショナルフラッグの関係者が多数携わった不祥事は、「ボドイ」たちの窃盗行為に巨大な組織的バックグラウンドがあることを感じさせる。  「窃盗・転売グループのバックにいる元締めは、ベトナム難民の子孫なんですよ」  広島県内に住む別の在日ベトナム人で、偽装結婚により日本に定住して技能実習生関連のビジネスに従事しているグエン(『「低度」外国人材』第4章参照)という姓の男性は、窃盗ネットワークの背景についてこう話している。  「彼らは日本生まれで、日本語も流暢ですから。ベトナム料理店なんかを隠れ簔(みの)に、窃盗ネットワークを仕切っているんです」  往年の日本によるインドシナ難民の受け入れは、定住促進施設で言語や生活習慣の教育がおこなわれて一定の成果を挙げるなど、日本の難民受け入れ事業の成功例として評価されることが多い。事実、私の取材を手伝ってくれているTをはじめ、国立大学や有名私大に進学したり大手企業に勤務したりする難民二世もすくなからず生まれている。  ただ、当然ながら二世の全員が健全な進路を歩むとは限らない。むしろ親世代が亡命する以前の社会階層や教育水準、家庭教育への熱心さなどによって、社会の表舞台で身を立てていける層とそうでない層が、一般の日本人以上に顕著な二極化を見せやすい傾向すらある。  この点も、やはり往年の在日中国人社会と似ている。日本ではかつて中国残留孤児二世たちが「怒羅権(どらごん)」という半グレ集団を形成し、本国からやってくる中国マフィアと結託して裏社会で覇を称(とな)えた。これと似たような構図が、一部のベトナム難民二世たちと、新たに日本にやってきたボドイたちとの間にも生じているのだ。 ———- 犯罪に手を染めてしまった元実習生がいる一方で、労働のために来日したベトナム人「偽装留学生」もいる。———-

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